自己満足ブログ。

メンタルへらってる女です

クリスマス

「はい、これ交通費」

渡された紙幣に描かれた顔は渇望していた福沢諭吉ではなく、野口英世の顔だった。お情け程度の1000円札が私の顔に突き付けられる。ありがとうございます。私は笑顔でそう言って、客の手から今日の成果を受け取った。

出会ってから約一年。

最近の客の金払いが悪くなっていることに、私はすでに気づいていた。

まあ、元々分かっていたことじゃあないか。おもちゃを手に入れた子供は、手に入れた瞬間に興味をなくす。飽きがきたら、ポイ。私は彼にとってはいくらでも代えがきくおもちゃみたいな存在だ。だから、多少ぞんざいにあつかってもいいや、壊れてもいいや、どうせ金さえだせば新しくおもちゃは手に入るし。彼がそんな考えをしているであろうことは想像に難くなかった。

駅につきホームを歩いていると、冷たい風が頬を刺す。私はマフラーに顔をうずめてポケットに手を突っ込んだ。

自分はもともと大切にされるような人間ではない。こんな雑な扱いでもへらへらしてしまうくらいには、自尊心もない。……どんどんこんな自分のことが嫌いになっていく。

私にはなにもないから今の位置にしがみついているけども本当は早く終わらせたほうがいいのかもしれない。これ以上無駄な時間を過ごさないためにも、そしてこれ以上自分を嫌いにならないためにも。

電車がきた。『各駅停車』と書かれた黄色い車体が目前に迫る。うん、ゆっくりでもいい。ゆっくり自分と向き合って、これから自分を認めてあげよう。

音を立てて開いたドアの向こうに、私は一歩踏み出した。